<November>フィンランドのデザインと教育

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メイド・イン・フィンランドの取り扱いアイテム。〈アアルト〉のイージーチェア、〈アアリッカ〉のオーナメント、〈アラビア〉のカップ&ソーサー、
〈marimekko〉のテキスタイルLokki

本格的な冬の足音が聞こえてくる季節になりました。突然ですが、近頃、雑誌などで耳にするようになった「フィンランドサウナ」、ご存知ですか? 本来、フィンランドでは湖の近くにサウナ小屋を立て、サウナで温まったら湖へ飛び込んで行ったり来たりを繰り返します。室温は高温すぎず、サウナストーンに(アロマ)水をかけながら蒸気を発生させ、じんわり温まるロウリュという入浴法が特徴。自宅や会社の一角にサウナを造って、接待に利用したりもするほど浸透していて、サウナ(sauna)という言葉もフィンランド語なんですよ。

 

北欧の中でも、デンマーク、スウェーデンと異なり王制でなく大統領制のフィンランド。素朴でシャイだけれど優しい人柄がどこか日本人とも通じたりもして、他の国と比べてちょっと異なる魅力を感じます。北欧の教育・福祉の水準は世界でも高いことで知られていますが、フィンランドでは1968年に「持てる資源のほとんどを教育に投資する」といった大胆な教育改革が決断され、この国で暮らすすべての「子どもの権利」が認められています。

 

今回は、「デザインと教育」をキーワードに、これまでの買い付け旅で立ち寄ったフィンランドの魅力をご紹介したいと思います。

 

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曲線が美しい外観は雲を表しています!

 

ここは、旅の中でいちばん楽しみにしていた中央図書館「Oodi」。昨年12月にオープンし、今夏、国際図書館連盟(IFLA)により、2019年度の「Public Library of the Year」に選ばれました。

125億円かけて造られたということで、それだけで教育を大事にしていることが伝わってきます。室内はこんな感じ!

 

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3階にある図書コーナーでは、ベビーカーがたくさん停められます。
窓ガラスには雪を思わせる白い模様がデザインされていて、ほど良く外が見渡せるように。図書スペースは本を厳選し、
スペースを広く取れるよう工夫されているため、車椅子でも通りやすく、すっきりとした印象。ここにない本は、他の図書館からの取り寄せもスムーズだそう。
広いフロアには〈アアルニオ〉の名作、ボールチェア!北欧では、暮らしながら自然と美的感覚が養われるのも納得ですね。

 

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フロアの真ん中にある一番よい特等席は、赤ちゃんエリアです。ラグ敷きで自由にくつろぐ親子の姿を見ると、こちらまで幸せな気持ちになります。子ども向けの本やボードゲームなども充実している様子。スタイリッシュなカフェもあり、ベジタリアンメニューに近いヘルシーな料理も美味しく楽しめました。

 

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図書館のテラスから。〈アアルト〉の名建築、コンサートホールや国会議事堂が目の前に。

 

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続いて、フィンランドを代表するデザイン・コレクションが所蔵されている「デザインミュージアム」。ここもまた、子どもたちの学び場。もともと、美術と工芸の学校だった建物をミュージアムとして公開しているのも素敵です。マリメッコやアアルト、カイ・フランクなど、伝統から最先端までのデザインヒストリーに触れられます。


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ちょうど幼稚園児たちの見学風景に出会いました。北欧では難民を受け入れてきた歴史があり、アルバニア、アラブ、アジア系など人種も多様。子どもたちの個性もさまざまです。  

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ヘルシンキ市内にある小中学校はこのような感じ。課外授業なのか、トラムで移動する学生たちにも遭遇しました。制服はなく、自由な感じがいいですね。 バスに乗っても、ベビーカーが5台くらい置けるスペースがあったり、子育てに理解を示す場面に出会います。私たち旅行者が困っているときもさっと手助けしてくれる優しさなど、どこから来ているのでしょうか。実はフィンランドは、独立して100年余りの歴史の浅い国。独立前はスウェーデンに支配されたり、ロシアに侵略されるなど大国に挟まった小さな国として苦しい状況にも耐え抜いてきたその辛抱強さが、豊かな国の政策やシャイで温かな国民性につながっているのかもしれないと感じます。 日常の中にとけ込むインテリア・デザインとともに、教育を国づくりの軸に取り組むフィンランドの魅力、いかがでしたか?(赤星)